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2019-09-12(Thu)

【ココノアの翼】第三章(5)馴染む



【ココノアの翼】

第三章  変わる風向き
   5 馴染む




馴染む

「秘密……?」
 ウーヴァの不安そうな声を支えるようにココノアは手に力をこめた。
「そう、秘密だ。――君が初めて僕の店を手伝った時、ツィーネが君に契約をしないかって持ちかけたことを覚えてる? あの頃の君は契約が何かも分からなかったっけ」
「精霊と結ぶ、契約? ココちゃんがツィーネからクアルツを貰ってる――」
「そう、賢いね。いい子だ」
 見えない不安から落ち着いてきたか、きょろきょろとあちこちを向いていたウーヴァの声が正面から聞こえ始める。
「それが、どうした? 秘密と関係あんの?」
 ココノアは唇を舐め「はい」とはっきりと肯定した。
「ウーヴァ。ツィーネと契約しよう。誰にも内緒、僕とツィーネと君だけの秘密だ」


『本当にやるんだね、俺のココ』
 昨夜、ココノアは枕に顔を埋めて頷いた。
『あんなにいいもの、他で見つかるものじゃない。分かった時から決めてたことだよ』
 隣の部屋で眠っているウーヴァを頭に思い浮かべる。
 契約の跡だけ残した、空っぽの体。その空っぽには大量のクアルツが入るだろうとツィーネは言った。容量が多いと言われるココノアよりも更に、その倍も三倍も。
『ウーヴァを逃したらいつ次がくるか分からない。――それに彼は記憶を失ってる。ある程度なら僕が操作出来るってことだ。都合がいい』
 願ったり叶ったりだ、とココノアは頭を上げて目元だけ枕から離した。笑った口元は枕で押しつぶしたままだ。
『そういうところがたまらなく好きだよ、俺のココ』
 心に染み込む柔らかくしっとりとした声に、ココノアは目を細めた。
『なんていったって、君の期待に添うのが僕だからね』


「なんで……? だって、あの時はココちゃんが止めたのに」
 ウーヴァの手が狼狽えた気持ちを表現するように落ち着かない。
「あの時の君は何も知らなかったし、僕も君のことを知らなかった。だけど、今はそれもだいぶ変わった。君は契約の意味を知ったし、僕は君がどれだけ強いかも僕とどれだけ一緒にいたいかも知った」
 ココノアはウーヴァから手を離し、両手を地面につけた。ツィーネのクアルツがその手の下で流れているのが分かる。他の精霊からの干渉を一切許さない、力強いクアルツだ。
 この心地よさが彼の体にも流れるのかと思うと口元が緩む。
「――ウーヴァ。クアルツを使えとは言わないよ。君にはツィーネのクアルツをたっぷり体に溜めておいてもらいたいんだ。いざという時のためにね」
「いざって? いつ?」
 ココノアが深く息を吸い込み、手に力を込めた。体を前に傾けたせいで後ろに結んだ髪もばさりと前へ落ちる。
「ココちゃん?」
「同じ精霊のクアルツ同士は溶けるように馴染む。こうやってツィーネがクアルツを注いでる地面なら、僕も――」
 ウーヴァの質問を無視する形でココノアは目を閉じた。手の下で蠢くクアルツが形になり、ずるずると自分の腕を伝って登ってくる。そのまま蛇のように細く伸ばした土の先でウーヴァに触れた。
「わ! な、何!」
「僕自身のクアルツを殆ど使わずに操ることが出来る。これはツィーネのクアルツに干渉して一部を操ってるだけで、僕の体内のクアルツは殆ど減らない。――馴染むっていうのはこういうこと」
 ふうと深く息をついたココノアが目を開けると、土がばらばらと崩れ落ちた。直接ツィーネからクアルツを注がれるような負担はないが、集中力は比べ物にならないほど必要になる。土のついた手を払い、先程土で触れたウーヴァに右手で触れた。
「あと――この先は一番大事な秘密だから他人には絶対に黙っててくれるかな」
 ウーヴァがココノアの手に手を重ねて小さく頷く。
「――僕は特別なんだ」
「特別?」
 ココノアは薄っすらと笑い、左手で前髪をなでつけた。
「ツィーネのクアルツなら、僕はツィーネからじゃなくても受け取れる、はず、だ。……本当は精霊に代償を支払う以外にクアルツを体内には取り込めないんだけど、僕の体はそれが出来る。君から放たれたクアルツが溶けて僕に馴染むんだ」
 ウーヴァの手をそうっとどけ、ココノアは彼の胸に手をついた。声が強くならないよう気をつけながら、普段通り優しくおっとりと告げていく。
「いざという時――もしもツィーネがいない状態で僕のクアルツが空になった時、君の中にあるクアルツを僕へ分けることが出来る。かなり効率が悪くなるけど、僕にも負担がかからない。緊急時にはもってこいの手段だ」
「俺がツィーネと契約したら、そのいざっていう時にココちゃんを助けられんの?」
 半ば食い気味で反応したウーヴァの声に真剣さが混じっていることを感じ、ココノアは満足気に目を細めた。
 そうだ、僕を助けられるんだ。君が望むことだよ。
「そうかもしれない。ま、僕がそんな場面になることなんてないだろうけどね」
『ツィーネ。準備をしておいて』
 そして、ウーヴァが力強く頷いたのが伝わってきて、ココノアは次の言葉を確信して唇を舐めた。
「分かった。俺もツィーネと契約する。ココちゃんとお揃いだ」
 暖かさのある決意に、ココノアは冷たい笑みを浮かべた。


<<<< 第三章 続く >>>>


ココノアって空を眺めるより地面を見上げてる方が好きだろうなって思います。


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Author:Nicola
Nicolaです。ニコラ。

長編小説がメインです。
時々短いのも。

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■連載中■

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ファンタジー/宿暮らし/精霊

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※インアスター後日譚

ニコとセシルの物語
本編10話/完結編52話

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全15話

ティッカータック
全104話

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